春の骨格/塔野夏子
 
骨格だけの春が
幾体もおどっているよ
薄桃と薄青が
まじりあうあのあたり

もういないはずのひとと
話をしたんだ
そうだよ それは夢だった
けれど

粒子状に還元されてゆく情景
から
逃れようと
左手の指から順に
音符のように逃げてゆこうとする私

何処へ

薄桃と薄青が
まじりあうあのあたり
ちがうよ それは夢だった
だから

私の中を
水滴する情景から逃れようと
ふいに
かなしみが露頭する

ああ
骨格だけの春が
幾体もおどっているよ
おどりながら 遠くなってゆくよ




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