オリオン/乱太郎
オリオンのまばたきが
霞んで見える
蒼い夜の隙間から
一通の手紙が粉雪のように
宛先が書かれていない
差出人の名も書かれていない
薄い肌色の封筒
糊づけもされていないので
中身を取り出す
ありがとう
読んでくれて
それだけ
誰かのいたずら?
早春のいたずら?
風がなにか呟いて
去って行った
きっとあの人から
勝手に思い込んだら
まだ雪の溶けきらない
路地裏から
ふきのとうの声が
聞こえてきて
僕は透明な吐息で記した手紙を
オリオンに向かって送り返す
ありがとう
読ませていただいて
オリオンの白い歯が
こぼれた気がした
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