ご挨拶/千月 話子
庭に植えた橙(だいだい)を
隣のいい年頃の娘が じぃと見ていた
熱視線で家が燃えるわい・・・
と小声で冗談を言いながら
剪定ばさみを手に持って
「家のは少し酸っぱいんだけどねぇ」
と呼び止めて 5・6個両手に抱えさせた
嬉しそうな娘の顔は福よかで
優しい観音様のようだった
冬の名残の冷たい空気を
小鳥のちいこい翼が
北へ北へと押し上げて行く
(うぐいすが隣の家の低い垣根の上で綺麗に鳴いた)
ホウ ここの娘が
ホケキョゥ 子を宿したんだとさ
ケキョケキョ なんと結構なことだろね
何となく分かっていたさ わたしは
時々 酸っぱい果実をもぎ取
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