鳥達の黄昏/ピクルス
冬紅葉の点在する山深く
孵らない卵の無事を祷りながら
死んだ鳥たちが青い空から降りてくる
「きれいなからだの時にもっと」
「若い奴らの指は欲しがってばかりじゃ」
その朝に目覚めなかった者たちの身支度を整えて
夜勤明けの男は黙って爪を切る
「自分の名前が書けます」
「風呂は我慢できるんよ」
葡萄一房が土に還るさみしさ
交わした囁きと
戻ってはこなかった方角
欠けた石を美しく隠そうとする嗚咽
「もう行くのか?」
「すぐに帰りますから」
風呂場まで手を繋ぐ影絵
新しい足袋を揃えながら
萎えた足の意味を考える
「誰も知らんのじゃ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
山犬の哭き声が
冷めたスープを揺らす
押し黙って身を竦めた人達の眉ばかりが
静かな談話室に並ぶ
「留守番もできます」
「めしもあまり食いませぬ」
古い手紙に許されて
蝉の死骸が灯る夜
あの駅の名前さえ知らず
懐かしい林檎の薫りに寄り添いながら
また鳥が軽くなった
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