花は桜木と申しますが/亜樹
緑色をした枝が伸びているのに、不意に私は気づいたのだ。
恐るべきことに、その桜はもはや自らの体重さえ自分で支えられず、その四方に伸ばした枝の処理などとうの昔に放棄して、人間様の世話がなければすぐさま朽ち果ててしまいそうなそんな様相で、春めいてきた空に向かって、新芽を伸ばしていた。
――おい、こいつ。まだ生きる気だぜ?
その日、20年にも満たない人生で、既に生きることに倦んでいた私には、その緑色の意地汚さはひどく好ましく映った。
人の手を煩わせながら、あの桜は今年も咲くらしい。
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