小さな追悼/伊那 果
天国へ昇る途中で 彼女は
今から生まれようと降りていく命に
グッド・ラックと声をかける
私はまだ、思いを残しているけれど
人生ってなかなかいいものよ
そして天国で
順番を待っていた命に
小さなバトンを渡す
その顔は涙でぬれているのだろうか
それとも優しい笑みをたたえているのだろうか
久しぶりに砂糖を二つ、紅茶に入れてみる
誰一人知らぬ私の口の中の苦い甘さを
知らぬ誰かが思っているかもしれない、午後
明日の天気は曇りのち晴れ 南西の風が吹く穏やかな一日となるでしょう
という平凡な一日
孤独な線は どこかで交わっている
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