かけるゼロ/智哉
 
生まれて初めて恋を知った男が
生まれて初めて失恋をしたのも
当然のことだが今夜のことだ


彼は駆けてみた
走り去った白い軽自動車に追い付けるかと
車種はよく知らない
ただナンバーは好きな数字の羅列だった

彼はかけてみた
今度は電話のことだ
繋がらないのは予測していた
欲しいのは声ではなく恋だ

彼は賭けてみたのだ
彼女がいつか恋を失えば
また彼の元に帰ってくるかどうかを


可能性は×0
ではないはずだ

戻る   Point(0)