少女の願い/赤澤るろる
 
一人の少女が
病室のベッドで

微笑みながら絵を描く



ちっぽけな命の花の
枯れる時が

すぐそこに迫っていることを感じながらも


カラフルな色鉛筆で
ひたすら絵を描いている


窓の外に広がる世界を
瞳いっぱい映して



窮屈に立ち並ぶビルは

太くきみどり色の葉を背負った木に


細々と軒をつらねる店は

小さくぴょこんと伸びる新芽に


無限に続く様な車の列を

おだやかに流れる七色の川に


時間に追われ、世話しなく動く人間達は

太陽の光でまるで宝石のようにきらめく水しぶきに



そして、雲一つない真っ青な空が広がっていた。


描き終えた少女は

絵の世界に塗り変えられることを祈り




目を閉じた。
戻る   Point(0)