「 鏡 」 /服部 剛
 
「 はい 」 
穴だらけのわたしはもう 
この一言があればいい 
今まで 
たった二文字が言えず 
眉を顰(しか)め、頭ばかりで 
あなたとわたしの「正しさ」を 
秤(はかり)にかけて 
(ああでもない、こうでもない・・・)と 
終わりのないひとり討論をしていた 
目を背けていた 
歪(いびつ)なあなたの姿は 
わたしを映す鏡でした 
あなたのありのままを 
両手につつんで 
胸に入れると 
穴だらけのわたしにも 
不思議なほど 
にこやかなあなたでした 
人の間に交(かよ)いあう 
うるわしい心の流れを 
わたしは願う 
上司も部下も 
平らかに 
わたしは見たい 
今日という日の出来事に 
現れるどんな人にも 
おなじ言葉を 
わたしは言いたい 
「 はい 」 
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