『雨と目』/しめじ
夜、雨の音がする。窓の外を見ると街灯に照らされた雨粒が猫の毛を散らしたように落ちていく。黒い水たまりの上を鼠が走る。雨は止みそうもない。
文机に向かっていつものように創作に行き詰まっていると、ドアをノックする音が聞こえた。居留守を使って聞き耳を立てていると、訪問者は諦めたらしく静かになった。再び机に向かうと、今度はドンという鈍い音がした。玄関を見ると鍵が開いていてノブが回って扉が開いた。
そこには色付きの眼鏡をかけた髪の長い女が立っていた。長い髪が濡れていて雫が垂れていた。女は盲らしくやたらに壁を手で探りながら部屋へ上がってきた。息をひそめてじっとしていたのだが、私の居場所がわか
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