少女のうた /服部 剛
 
サングラスをかけた 
全盲のおじさんが 
若者のリュックにつかまり 
地下道に入っていった 
ポケットに手を入れて 
道に佇むぼくの 
目線の先に遠のいてゆく 
ふたりの背中 
( 目を開いても何も見えずに 
( 何かを探しあぐねるぼくを 
( 確かな場所へとつれてゆく 
( 導き人は何処にいる・・・ 
靴音ばかりの響く 
地下道に入り 
少し離れた背後には 
若い母と手をつなぐ 
幼い少女が繰り返す 
「 てんのかみさまのいうとおり 」 
中途半端な恋や仕事で 
散らばった迷いの破片 
手をあてた 
胸に納めて 
ぼくは
地下道を出た 
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