二月の終わり/ブライアン
団地の屋上が、高架橋の上から見えた。冬ばれの日、快い風が背後から吹く。
高架橋は、かつての国道と今の国道をつなぐために、小高い丘を下る。
周囲に広がる田畑は、春にそなえて眠ったままだ。
くわっくわくわくっわ、と音が鳴いている。
くわっくわくわっくわ。
横には工業団地あった。そこから鉄をたたく音も聞こえる。
風に混じるわずかに鼻につく匂いは、この工業団地の鉄の匂いなのだろうか。
くわっくわくわくわ。鳴き続ける音。
轟音が響く。空を見る。2機の飛行機が空を飛んでいた。
音は空を覆う。
その下、中年の女性が空に向かい悪態をつく。
音が過ぎ去るまで、彼女は空をにらむ。
足を引きずって、彼女は車庫の前を箒で掃きはじめる。
轟音は東へ消えた。
くわくわくわくっわ。
くわ!
音はやまない。
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