かわく蕾/亜樹
 
薄汚れた茶色の天井と
古い紙の匂いと
真新しい本の匂い
部屋の中心のストーブの上
やかんがシュンシュンと音を立てる
そのお湯で淹れられたコーヒーの匂いは
そのまま壁に染み付いて
また新しい染みになる。

こんなにも
しっかりと思い出せる
高校の司書室に
飾られていた
ドライフラワー
司書の先生が、
咲かないほうがいい
と言う
咲かないほうが
いいドライフラワーになるの、と。

水気のない花びらを
彼女は優しく撫ぜていた。

そのとき彼女は
どんな表情をしてたのだろう?
薄汚れた茶色の天井と
古い紙の匂いと
真新しい本の匂い
部屋の中心のストー
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