ラセンウジバエ(雌)の独白/佐々宝砂
が。
3.未明
大いなる光明にすべてを明け渡そう!
汚らしい小さな醜い生き物を消し去って!
ラセンウジバエ(雄)が叫ぶ。
累々と並ぶラセンウジバエ(雌)の死骸のうえで。
奇妙にアンバランスなプロポーションの
つるりとした肌の生き物がやってきて
ラセンウジバエ(雄)を聖別する。
彼らは歓喜の中に殉死するだろう。
私ははじめて固有名詞を持つ。
他のラセンウジバエ(雌)がいなくなったいま。
ラセンウジバエ(雄)も死に絶えたいま。
さて私はどうしたらよかろう?
飛ぶしかないから私は飛ぶ。
私はラセンウジバエ(雌)である。
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