薄明に寄す/みつべえ
・・・目がさめた。深夜らしい。壁の向こうに冷たい空気の対流。カーテンのない窓に星屑をちりばめ、足早に立ち去っていった者の気配がまだ感じられる。耳鳴り? ちがう。これは地球が自転する音だ。わたしの感覚の触手は、崩壊の淵にあやうくも佇む水に濡れた女の長い頭髪のようにゆらめき、外部へ外部へと伸びてゆく。ここではない遠方にわたしの内部がある? ふっ、はやくも語るに落ちた話ではないか。静かに! わたしの触手の先の繊毛が増殖する音が聞こえる。さわさわと風にのって流れだす。隣家の表札を読み取り、その向かいの某大学の体育館の塀に沿って広がる。シャッターのおりた商店街に展開し、隙間という隙間から入りこんで物色する。
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