失われていく題名/秋津一二三
 
りますから
と ウィンク
「女の甲斐性」
頭髪の揃わぬおさなご
ぬいぐるみで包まれ
こぐ
「ぬいぐるむ」
まろうどは土足
靴という物を知らない
分かりきった危険が迫っている
「客人は警を告ぐ」
空襲は燦々粛々と開催されている
いっときを棚上げし接吻を繰り返す
明日が来るなんて信じていられない
「その日の戒厳令」
その港は朝
女は男の帰りを待つ朝
陽に空けることはない朝
「霧中の汽笛」
実花か徒花か と
待ち侘びていたのに
どうしていいのか 決めていなかった
「訃報と朗報」
喜怒哀楽も愉楽
睦み 語り合う を 責めるものはない
わかたれなかった季節は
「四季のまぐわい」
意味も価値もなくし
五体も定かではない残りは四
審判はないから選択を
「無辺の更地の縁」
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