紙の欠片/ここ
 
月が眼の見えない日
紙の欠片が寝返りをうつと
月の手からこぼれ落ち
ゆらり、ゆらり空に泳ぐ


慈愛の翼に煽られては
喜び香る
ひとひらの
さくらの花びらとなり

情熱の翼に煽られては
怒りに濡れる
ひとつぶの
天の涙となり

哀愁の翼に煽られては
哀しみ溢れる
ひところの
魂の宿らぬ葉となり

神秘の翼に煽られては
楽しみ時を忘れる
ひとときの
輝ける結晶となり


この世の儚きを夢の中
人の手に絡めとられ
目を覚ました紙の欠片は
月を想う



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