なまず/プテラノドン
 
川辺に仕掛けられた網という網が、
鱗眼の兄弟に荒らされている。そして、
二人が念願かなって鯰をバケツに入れていた頃、
廃材置き場の亭主が首を吊って死んだ。
集積車が行き交うだけの、さびしい葬式だった。
タイヤのない軽トラック、錆び付いた洗車機のホース、リフトカーに
持ち上げられたままの冷蔵庫ー
その晩、鱗眼の兄弟は、
光沢が削げ落ちた、プラスチックの水槽を
家に持ち帰ると、
うつろな庭先で、水槽の、
ゆれ動く水面のテカりを
はぎしりしながらずっと見ていた。
月明かりに照らされた瓦は、
柔肌のようだった。
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