天神鬼悪霊狂/狩心
ただし 腕の関節内側辺りの柔らかい皮膚から 細い手首の命まで
深く刻まれた傷 消えない どす黒く赤い 断崖絶壁の影
血が一滴も出ない 不可思議な傷 触ると かさかさと音を立てて動いた
波打つ足 病院へ向かう 誰も何も分からないと言う
血も出ない傷に 甘いゼリーを染み込ませたカーゼをいっぱい詰め込んで 子供騙しの様な応急処置 それで終わり
この世界から切り離された気分 チビ助は町を歩いた影 炎の如く 地上の道路で消滅した
傷は突然消えた 何の前触れもなく 魔法のように
チビ助は思う もう一度 あの悪霊に会いたいと
黒と黄色と赤
その日から町中の信号機が変わった
信号が黒の時にだけ
チビ助はそこを渡る
せかい
散りばめられている
網膜の裏側でダンスする
遺伝子信号が世界を
モノクロにするまで
セピア色にするまで
目の中にガーゼ
眠れない夜は今もなお
記憶の奥底で眠る
せかい
チビ助はそこにいる
戻る 編 削 Point(1)