悲しみよ こんばんは/伊那 果
約束の日が待ち遠し 指を折り 折々君への思いも募る
効率という言葉から程遠く 君待つ時はただ過ぎていく
募らせて逢う時のため凍てついた手足の固さ心に刻む
玄関に近づく足音聞きながら 寝たふりをする星深い夜
君を問うように重ねた掌に もう答えなどなくてもいいや
平安の女貴族(きぞく)のように 約束のない夜もただ来ぬ人を待つ
会いたさも今は偽り 寂しさに打ち負かされて受話器を握る
ちっぽけなストーブの灯に照らされて 去りゆく人のぬくもりを知る
幸せの形はいつもさりげなく 悲しみの中で初めて気づく
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