春の前日/ふぁんバーバー
 

こんなに胸がきょう
せつないのは
わたしだけなのだろうか

春の前ぶれの雨が
まるで生まれたてのたまごのような
しろいふあんと
いたたまれぬきぼうと
あたらしいよかんと

蜂のはばたきのように無音で
わたしの胸にはこばれるのは
じっと耳をすませずにいられないのは

会社のパソコンの
キーボードをたたいていても
すこしだけ開いた窓から
いちども聞いたことのない歌が
とてつもないなつかしさで
わたしを泣きそうにさせるのは

きょうだけのことなのだろうか
こんなに胸がせつないのは
なぜだれも
このきもちについて話し合わないのだろうか

明日にはもう
なにもかも元どおり
こんなに胸がきょう
せつないのは
わたしだけなのだろうか





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