芽吹き糸/ねこ歩き
そよ風に吹かれてなんとなく
分かった気がした 春の始まり
口笛を吹いてどことなく
鳴かないよ、と頑張った 冬の終わり
爪先から煩悩のひとつひとつまで覚えているわけじゃないけど
隙間に綻んだ糸くずは見逃さないでいたかった
老い先まで僕たちひとりひとりがね、忘れてゆけるわけじゃないけど
少しだけ楽になれた気がするんだ
ほつれたセーター着込んではごった返し人混みで
新しい入り口が知らぬ間に笑っていた
やわらかオムライス食べたくて走った階段降りて
悲しい出口を知らぬフリ笑ってみた
スプーンもフォークも動かすたびに 萎れた糸が哀しそう
気になるな、と引っ張ったら
するすると解けていった 痛かった
気にするな、って呼びかけたけど
そよそよとサヨナラ言った 悪かった
しばらく待ったんだ 太陽は銀河でお昼ねしているから 君は眠ったまま
春風に打たれてやっとぼく
届かないと知った 花咲かす詩
君はずっと知らないんだろう
糸はきっと芽吹くんだろう、か。
ねぇ、そこじゃ見えるかい
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