どうしようもない春がくるからピンク/水町綜助
 
朝が音とともに明けたとして
僕は目を覚ますのか
低い体温の
衣服との間にこもる
すこしの熱が
昼の街に広がっていくのか
肌の表面を右手で触る
なめらかさを見つける
夜のうちに注がれた
グラスの水
水滴の乾きと
平穏な一日の始まりに
グラスの水は静まり返っている

カーテンの開け方
左にレールをすべる音と
観葉植物とかすれる音
光が入るとともに
陰影が生まれて
僕はそれがすきで
おうとつを目で追ううちに南中する
関係のない
太陽と僕との日常

長針と短針の重なりがずれるうちに
ひとつなんでもいい
どうでもいいことを決めてつぶやく
たとえばパンを焼
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