鎮魂歌/こしごえ
 


おもいでの形見
私にとってこれは
変わらないことのひとつ
ここには風は吹いてこないけれど
ほがらかなひだまりがぽうっとしている

いつまでも
微笑する宇宙のふちで。
私の子午線をよこ切る
水声の清らかな尾を耳でつまむと
かわいらしいのどごしで
あふれる調べ

私の知らない世界を
知っているおもいでの形見
この懐かしい未知なる遠さ
コンパスで描かれた未到の設計図で
永遠を葬送する雨を降らす日

濡れる声が歌う
星の瞬く岸辺で
耳がかたむいてゆく








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