釣り人/小川 葉
 
瞳の岸辺に
釣り人がやってくる
かなしみの主を釣るために

まつ毛が雨に濡れている
湖水が溢れて川になる
大地の鼓動が震えている

釣り人は帰っていく
明日もまた来るだろう
かなしみの日が続く限り

釣り人は知っている
かなしみの主とは
わたし自身であることを

釣り人のことを
わたしは知らない
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