蛸/天野茂典
 
まれて
     いのちの尊厳をあたえられた自身の
     真の実相を現代思想の延長に
     スキゾとして刻みたかったのだ
     サキは笑った
     蛸の身体が余りにも知性とかけ離れていたからだ
     だが 蛸は真剣だった
     キーボードをたたき続けた
     たこ焼に関する抑圧的存在論
     サキは笑った
     蛸は蛸としてこれからも
     わが遺伝子による
     世界内存在のおいしいたこ焼論についても
     言及してゆくつもりである
     サキは笑った

     蛸は精神分析学にも精通している


             2004.6.20 


     
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