『マトリョーシカ』/東雲 李葉
誰も本当の僕を知らない。
だって僕にも分からない。
仮面の数を数えよう。色とりどりの笑顔の形。
鏡に映る自分さえ誰かの影を真似しているんだ。
開けても開けても同じ中身の人形みたいに、
かぶっている表面だけがすべてのやつと一緒にしないで。
僕は本当の僕じゃない。
だけど誰も言わないだけ。
着せ替え人形の感覚で取り替えのきく性格なのさ。
どれなら君に似合うかと一生懸命考えてる。
彫られた笑顔貼り付けて素肌の上で泣くように、
きっと本当のことなんて誰にも言えない。
だけれど本当の僕は行き着くところ僕でしかない。
どんなに誰かを演じても貫き通った芯は変わらない。
開
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)