アンジュール/仲本いすら
夕暮れの無くなった街で
僕はリコーダーを拾う
オレンジ色の零れた
艶がかったそれは
いったい誰が落としていったものなのか
(聞こえますか、アンジュール
(僕はまだ、この街にいます
(聞こえますか、アンジュール
(君の好きだった歌が、このあいだ
(ラジオから聞こえたよ
降り注ぐ星には誰かの願いが満ちていて
僕の些細なおねがいなんて
誰にも届きはしないと思ってて
そっぽ向いた瞬間にブランコは僕を連れていった
哀しいかな、独りになるのは
マグカップも一個でいいから
洗い物が少なくなるね
二人で買ったマフラーはどうしよう
まだつけ
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