苦い雪/銀猫
遠くから
貨物列車の轍の音が響き
耳元まで包まった毛布の温もりは
夜への抵抗を諦める
暦が弥生を告げて
色づき始めている、
翡翠を纏った木々の芽吹きを
さくらいろの気配を
止めたいとかなしむのは
きっとわたしくらいのものだろう
夜の軋みは
胸の深くに続くレイルを伝わって
涙の代わりを連れ去ろうとする
わたしの
外側に出られなかったいくつもの感情が
遠くで軋みと重なり
わだかまった口の中で
苦い雪になる
唇には
思うほどの冷たさはなく
ただ
苦い味がする
淡き春に
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