ニヤっとね/紫音
 
だから

ブランドを纏い化粧をし

下心満載で君と話すことさえできる


化粧を落としたら

もうそれは私ではないから



地下鉄の窓越しに映る自分に

何かが透けて見えているのは錯覚じゃない


空っぽの投影が幻影となり

そこに重なる“今”を掠め取るだけ



外套に身を包み

雨の中をひた走るネコが

申し訳なさそうに足元に擦り寄ったとして

果たしてシュレディンガー足り得るのは

ネコか

はたまた私か


魚屋は言うだろうさ

「これがマグロだろうが深海魚だろうが、そう思って食
[次のページ]
戻る   Point(1)