ニヤっとね/紫音
だから
ブランドを纏い化粧をし
下心満載で君と話すことさえできる
化粧を落としたら
もうそれは私ではないから
地下鉄の窓越しに映る自分に
何かが透けて見えているのは錯覚じゃない
空っぽの投影が幻影となり
そこに重なる“今”を掠め取るだけ
外套に身を包み
雨の中をひた走るネコが
申し訳なさそうに足元に擦り寄ったとして
果たしてシュレディンガー足り得るのは
ネコか
はたまた私か
魚屋は言うだろうさ
「これがマグロだろうが深海魚だろうが、そう思って食
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