『源氏物語』の概論の一部を学んだ日/右肩良久
 
体系の中で連続して補完しあっているなんて彼らにはわからない
 彼らにとっては舐めて苦いインク部分の分布が紙の中でどうなっているか
 という問題でしかない、わかるか良久
 と自分自身に言い聞かせているのだ

 生まれたての柔らかな虻が一匹、教場のほぼ真ん中の天井近く、魅惑的な羽音をたてている

 僕は直感している。
 僕の意識の外側でまったく違う生活が進行しているのを。
 僕はもう本当は死んでいて
 僕が見聞きしていることにはもう何の意味もない。
 カメラのさくらやで買ったMacBookの
 ローンの残金のこともまったく心配しなくていいんだ、ってことを。
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