軌道エレベーターに乗って、/たりぽん(大理 奔)
 
  チェーンがディレーラーをすり抜ける音
  始まりのいつもの儀式
  数秒間の加速のあと静かに静止する
  制動機の動作確認、これも儀式
  そして百メートルごとの加速機を通過しながら


足下が落ち着かないから、せめて
ウールの靴下を履いてくればよかった
つまらないことばかり気になる


  上昇が遠ざかっていく事だと知る
  そこは高みなどではなくただ、遠い場所
  そして近づいていくことは
  おちていくことだということも


水が百度で沸騰する場所が恋しい
精密電子機器のことなんか気にせずに
インスタントラーメンをすすれる場所が


  たどり着くと行き止まりだ
  一番遠いところはひどく狭くて
  小さな窓が開かれているだけで
  なぜだかウールの靴下が欲しい


どうせなら、空の真ん中に打ち込まれたかったね
いつか引き寄せられる放物線
生き様をそんなふうに描きながら





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