ぼくの生命線/石川和広
父が立ち
ぼくはマウンドで
プレートに立ったまま
18メートル離れてる
土のグラウンド
おかしいな、ここ畳の部屋だよ
僕が変な感覚?
やっぱり勝負?
ものすごい暴投投げても
父は芯で捉えて
僕のグローブに硬球を打ち返すんだ
グローブが飛んで
手が痺れて
じーんと
熱くなって
もうだめだとも云えないくらい
震えて立ちすくんで
来年定年の
父なのに
本気バリバリで、、、
もう玉ですらない魂を
投げてしまうぼくの、ぼくの、
たすけてくれたすけてくれ 父なるもの
父の、乳の、地地の、何だろう
何なんだろう
ひとり行きつけのジャズ喫茶に逃げる
イタリア仕込みのすてきな手つき、なのに関西弁
熱いコーヒー 時にぼくのかたまりをほぐす
祖父は、密林で左胸に弾丸を受けたそうな
胸ポケットの小銭入れが
いのち助けたそうな
ぼくは今夜胸ポケットのない
セーター着てる
あっ
ズボンにも
ポケットあるや
???
お尻のポケットから財布を出して
小銭をはらって家に帰る
やれやれ
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