ぼくの生命線/石川和広
 


母方の父は
南方戦線の
密林にいたそうな

ぼくはまだ行ったことのない
亜細亜の
異国
木の香り
空気に含まれる水
そして
祖父の流した血のにおい
今はかんじられないことばかり

うふふ
うふふ
だけど祖父のかおり忘れたけど
染みついたぼくの眼の奥の
絵になる男だった

ぜんぶ夢の中だけど
覚えている
消えることのないつながりの賛歌

うたに聞き入っていると
居間に父が帰ってくる
どうしても
「おかえり」が云えない夜だったんだ
悪いとは思うけど素直になれないんだわ

こまった、



一緒にいても
バッターボックスに父が
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