サークル/鈴木
「サークル」
鈴木祥平
――聞いてくださいよ! 僕はどこにでもいる大学二年生です。しかるに西島匠という固有性を持つ男だと、ぜひとも知っていただきたいのです。
約二時間前、我が大学最寄駅から徒歩五分の飲み屋「ぽおつ升」の店主へ、はるか先輩が拈華微笑してカウンター越しに練炭を注文したのであります。しかし鳥皮、つくね、軟骨を焼く作業に熱中していたマスター・升尾角太郎もさすがの百戦錬磨、酔いどれ自殺志願者の戯言には目もくれず黙々とじゅわじゅわ遊戯を止めません。ところで僕は酒毒に撹乱された意識に先輩が円周率を唱えるありさまを映し、ひいては両肘に挟まれたふくよかなπの容積を演算しておりました。よ
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