融けるものなど、ない/clef
 
荒(すさ)ぶりの手のひらを返して
寝息の間に
水を汲みにいく

逃げ出さない太陽のしるしと
ガラス窓の四辺に溶けこむコールサックの黒煙を
一枚ずつめくりあげる

この程度の渇きなら 
砕けるものも 
破れるものも 
ない 

ともすれば 凭れかかりそうになる杖がわりの傘に
反転した像が映り込むでもなく

ぬかるんだ舗道を 
ただただ  会いにゆくためだけに 
歩いている 
歩くほど遠く

融ける溶ける  

熔ける

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