夢の終わりから、ずっと/小川 葉
夢の終わりから、ずっと
人は生きてるのかもしれなかった
最後に夢を見たのは
母さんのおなかの中で
とつぜん目を覚ましてから
人は生きてるのかもしれなかった
夢の終わりから、ずっと
何ひとつはじまりも終わりもしない
ほんとうはまだ
母さんのおなかの中で
夢を見続けているのかもしれなかった
冬の終わりから、ずっと
春は訪れていたのかもしれなかった
人はいつか夢を見ることを忘れ
夢が人を見ていることに
気づかないふりをしながら
生きているのかもしれなかった
戻る 編 削 Point(3)