人の正しさ/小川 葉
人が空を飛んでいる
かもめがそれを見ている
見ているのは
いつも人だったのに
いつのまにか
見られる方になっている
生きるものすべてが
言葉なくそれを見ている
僕が今きれいと心で呟いて
摘んでしまいそうになった花も
間違えて鳴らしてしまった
ピアノのいちばん高い
お終いのドの音も
かもめは
それよりもっと高い声で
間違えないで唄をうたう
人はそれよりもっともっと高い
空の向こうへ
間違えないで飛んでいく
海に降りつづける雪に
何ひとつ間違いがないように
掌からこぼれていく
人の正しさがある
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