夜の海/亜樹
 
橋の下に
鯨がいる。
ぬっめりとした皮膚が
ゆっくりと波うった。

大きな鯨は
泳いでいる。
きらきらと
目がひかる。
いくつもあるそれは
同じ方に
向かって流れた。


ああそうか
おまえはあすこに
ゆきたいのか


海の端には
月がかかっている。
その光に向かって
ゆっくりと
波が進む。

今日はひどく
さみしい夜だ。
吹く風は冷たく
橋の下にいた鯨は
いつの間にやら
沈んでいた。
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