返事/アンテ
投げると
庭のブルーベリーの枝に当たって葉をゆらす
やれやれ
一体なにをしているんだろう
お茶の準備をしていると
縁側で軽快な音がして
小さな紙切れが入ったボールがひとつ
足もとまで転がって止まる
キャッチボール
しようよ
封じ込められたメモ書きの文字は
とても力強くて
縁側を行ったり来たり
ずいぶん悩んで
ようやく書いた返事を
しっかりと空気のボールに入れて
長靴で水しぶきをたてながら
庭を横切って
垣根のきわから外へ
力いっぱい
投げた
と思う間もなく
鈍い音とともに跳ね返ってきた
ボールは
海水のうえを何度か弾んで
庭の半ばに落ち着いて
さざ波にゆられるうち
気体に還って
水面にわたしの返事を放った
いつからこんなところに
柿の木なんて
立っていただろう
垣根のむこう側
風に葉を揺らしている
まぎれもなくボールが当たった証拠に
ひとつ ふたつ
波間を葉がただよっている
[グループ]
戻る 編 削 Point(2)