返事/アンテ
 
おにぎりの要領で
ぎゅっと空気を押し固めると
野球のボールくらいの球体ができあがる
無色透明だけれど
触れるとちゃんとそこにあるのが判る
砂糖や小麦粉をまぶすと
指の跡までくっきりとうかび上がる
縁側に立って
投球の構えから
勢いよく腕を振り下ろすと
音をたてて垣根が葉をゆらす
庭に満ちた海水がしぶきをあげる
あるいは手元が狂って
とんでもない方向に飛んでいってしまう
だれかを傷つけたりしていないだろうか
謝る手紙をしたためて
空気のボールに封じ込めるものの
同じ方向に投げる自信がなくて
代わりに
当たり障りのない
王冠とかキャンディを入れて
力任せに投げ
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)