慈雨/あすくれかおす
 



静かな


喧噪のなかに在ってさえ
ここはいつでも
静かな水辺なのだ


心に
一本の葦が伸びていく


こんなにも
羨んだり
誹ったり
争ったり
恥じ入る気持ちが
私のなかにはあるが


それらは
靜なる植物の体内を巡って


いつのまにか
受け容れて
おぎない
認め合って
浄化される


いったい
 どうして


私はそっと近づいて
無防備な質問を投げかけるが
葦は何も答えない




柔らかな
静けさのなか
水辺にはやがて
慈しむような
雨が降った








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