「 左手と、切り分けられた三十一文字の指と文体遊戯。 」/PULL.
 
こにもいない。
あの霧の夜、ひとは、次元の彼方までひとり
もいなくなった。わたしは知っている。血塗
られたわたしの人差し指は、還ってこない。



いたずらな指いつも誰かの中で濡れているだから切って渇かすの。



 渇いた夜は、裏庭の土に、水をやる。きっ
と春がくれば芽を出して、夏には立派な指が、
実るだろう。



痛い?指輪を外したこの指で痛くない薬つけてあげる。



 想い出すのは大好きな、人差し指よりもな
がい、あなたの薬指。ティーカップを持つと
きはいつも、なかよく隣の小指と一緒に、反
抗期。ねえ言ったっけ?。あたし、あなたの
小指に
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