うそをつく人/亜樹
父はいつも嘘ばかりついていた。
山の墓の横に開いた穴の下には死体があるとか。
ハチは一回人を刺すと死んでしまうとか。
私は実は赤い橋の下から拾ってきた子供だとか。
いつもそんなことばかし言っていた。
それが実は嘘ではなかったということを知ったのは、随分大人になってからだ。
山の墓の横に開いた穴は、昔土葬された棺おけが土の中で朽ちて出来たもので。
ミツバチは何かを刺すと針が抜け、そこから内臓が引きずり出され死んでしまい。
理科の時間に習った遺伝の法則では、O型の父とAB型の私の関係の説明はできなかった。
こんなことをいうと、随分と私がひねくれた、意固地な子供であった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)