うそをつく人/亜樹
 
父はいつも嘘ばかりついていた。

山の墓の横に開いた穴の下には死体があるとか。
ハチは一回人を刺すと死んでしまうとか。
私は実は赤い橋の下から拾ってきた子供だとか。

いつもそんなことばかし言っていた。
それが実は嘘ではなかったということを知ったのは、随分大人になってからだ。

山の墓の横に開いた穴は、昔土葬された棺おけが土の中で朽ちて出来たもので。
ミツバチは何かを刺すと針が抜け、そこから内臓が引きずり出され死んでしまい。
理科の時間に習った遺伝の法則では、O型の父とAB型の私の関係の説明はできなかった。

こんなことをいうと、随分と私がひねくれた、意固地な子供であった
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