さくら予報/銀猫
 
玉葱の味噌汁に
なみだを一滴入れてみたものの
塩加減は少しも変わらず
だれも悲しくなりませんでした

風の強い庭先に鳴く野良猫に
思いつきで名前を呼んでみました
ずざ、と塀を駆け上がる音を残しただけで
すこしも温かくなりませんでした


風が桜色に染まるのを
わたし、夢見て過ごしています
通勤の乗り換え駅では
きみの住む街の名前だけ
いつも開花しています

青い表紙の詩集に
こっそりしたためた
きみの横顔は笑うでもなく
ただいつも俯いて
こちらを向いてはくれません


遠い、とは
そういうことでしょうか
暮らす、とは
こんなものでしょうか

わたし、オーデコロンを変えました

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