ビー・ゼア/餅月兎
 
わたしを定義するもの
今朝齧ったトーストの歯形

わたしを定義するもの
会社のデスク

わたしを定義するもの
そこに転がったボールペン

わたしを定義するもの
配達員に捺したハンコ

わたしを定義するもの
くずかごの鼻紙

わたしを定義するもの
実家にあるいくつかのアルバム

わたしを定義するもの
何人かの友人と家族と

あとは
みしらぬ他人という定義
それは虚無やゼロといった架空の概念によく似ており
そこかしこに漂っている
それを見ることが出来るのは
墓の下に住所を持ちながら
迷子になってしまった方達だけで
ときどき
かれらと交じり合った
[次のページ]
戻る   Point(2)