シリーズ 正方 1/あすくれかおす
ないわよね・・・
今日の晩食は、ルイの好きな石焼ビビンバである。
この変な外国人は、嬉々としてそれをかき混ぜる。
わたしのキムチはまだまだ辛さも、色味も足りないかもしれない。
それでも良いのだ。それでもこの外国人は、嬉しそうに食べてくれるから。
ひょっとしたら、ほんとに万が一だけど、この恋が、万馬券かもしれない。
この国籍不明の、競馬好きの、韓国フリークの、優しい人が。
わたしは半分ぼーとしながら、視線を彼に投げてみる。
「ねぇ、モウヒトタタキ。モウヒトタタキください」
やかまし。
わたしは小さく笑ってスリッパをつっかけ、重たいお尻をあげて、炊飯器へとむかった。
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