音/城之崎二手次郎
 
 深夜。夏子は健二の写真を見ていた。二人はあまりにも似過ぎていた。でも、やはり健二でないとダメだ。今さらと思われてもいい。携帯電話の画面に健二の番号を出す。一度だけ。これに出てくれたら、やり直してくれるようにお願いしよう。しかし、聞こえてきたのは通話中の音だった。夏子は健二のメモリを消去した。同じ時、健二のケータイから、登録者名がひとつ消えていた。一度だけ。健二の望みは通話中の音に絶たれていた。

二〇〇字物語第二十四弾。
戻る   Point(0)