一羽の鶯の命日とも呼べる或る冬の日/朽木 裕
 






目は静かに瞑っていて
見れば右足は痛々しく折れていて

仄かにあたたかい命
けれど決して開かない瞳

不意に後ろから声をかけられて
私の手の中を見遣るお婆さん

「貴方は優しいのね、」

そういう声が心に沁みて
沁みてようやく涙が滲む

見知らぬ彼女と肩を並べて歩く
犬が来そうにない小高い丘まで歩く
そうっと草を分けて枯葉をどかして
静かに静かに横たえる

寒くないように枯葉を少しかけて
二人で静かに手をあわせる

「じゃあ、さようなら、ね」

かすかにお辞儀をして彼女と別れる

冷たい風がびうびう吹く日
一羽の鶯が死んだ、日
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