きっと猫だった/よしおかさくら
 
雲の流れ
君は待っていてくれるだろうか

明るい陽射し 
海に反射してきらきら
急な坂道
風に乗ってふわふわ
誰の顔を見ても君ではない
抱き上げてくれる腕も
見覚えがない
どうしてこんなに遠くまで
しかし見知っている町の姿
波止場の錨止めで
ぼんやりと過ごす
いっそ居ついてしまおうか

夢を見ているみたい
君の笑顔ようやく見つけた

細く高い塀に上って
そっと歩いたり
横に湾曲した
狭いトンネルに入って
潜り抜けたりしたから
きっと猫だったのだろうぼくは
君からの手紙を読みながら
ハートのしるしを頼りに
辿りながら
たぶん隣町へ足を踏み入れた
来たことがあるようなないような
抱きしめられたことの
あるようなないような
きっと猫だったのだろうぼくは
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